抱っこ法が大切にしている「3つのこと」


(1)大人が主導しながらのやりとり
 社会の変化に伴って子育てや教育の様相も変わり、最近では、子どもの気持ちを尊重するという考え方が定着しています。ところが、子どもを尊重するという概念に縛られて、親(大人)としての主導性を発揮すべきときに、子どもに主導性をゆだねてしまいがちなようです。子どもの幸せな成長にとって何か大切なノーなのか、またそれを子どもにどう伝えたらよいかが分からなくなり、逆に子どもからのノーに対してはひるみがちになっているのです。
 親(大人)が大事なときに主導性を発揮してくれないと、子どもは糸の切れたタコのような頼りなさを感じてしまい、向上心を発揮することができないのです。それでは、ほんとうに子どもの気持ちを尊重することにはなりません。大人が主導性を発揮しながら、子どもと互いに働きかけあい受けとめあうやりとりを心がけると、「甘すぎ」にも「きびしすぎ」にもかたよらない、ほどよいかかわりを楽しむことができます。
 抱っこ法は、親(大人)の心のケアも大切にしながら、ほどよいかかわりを楽しめるようになるには、どうすればよいかを具体的に伝えます。

(2)甘え上手と甘えさせ上手
 ここで言う甘えとは、親密なふれあいや許容的になることを求める甘えではなく、大切な気持ちをまぎらすことなく表現できる訴え上手・お願い上手のことです。
 戦後世の中がめまぐるしく変わる中で、私たち大人は心にふたをして、泣いてなどいられない暮らしを続けてきました。そのため知らず知らずのうちに、泣かせない子育てを、世代から世代へと繰り返してきたのです。その結果、親(大人)は子どもの泣き声を聞くと、つらくなったり自分を責めたりし、子どももまた、感情ストレスを溜めこみながらも、泣いて訴えずにひとりでがんばろうとしがちです。
 泣くことは、親に大切なお願いをする原点ですから、泣き上手(元気に泣いて訴えて→受けとめられて→すっきり泣きやむ)な子どもは、おのずから訴え(甘え)上手な子どもに育ちます。訴え上手だと、大人にとって分かりやすく受けとめやすいですし、子どももすっきりして泣き止むのが上手ですから、かかわるのも子育ても楽です。ところが訴え(甘え)下手になっていると、ほんとうは何かつらい思いがあるのに、ストレートに訴えずがまんしているために、それを紛らすかのように、周囲が心配するような行動に走ったり、つい心にもないことを言い張って大人を困らせたり、いったん泣き出すとなかなか泣き止めなかったりします。
 抱っこ法は、子どもと大人が甘え上手・甘えさせ上手を取り戻していくことの大切さと、そのための具体的な手立てを伝えます。それによって、互いの大切な気持ちが伝わりやすくなるとともに、さわやかな心の状態を取り戻すことができます。

(3)体を仲立ちにした心の交流
 抱っこ法は、つい言葉に頼りがちな子どもとのやりとりを克服して、必要なときには体で触れ、手を添えて導くことを大切にしています。これまでも、親しみや安心を伝えるときにふれあいやぬくもりが大切だ、ということは強調されてきました。でもそれだけでなく、子どもを慰めたり、励ましたり、しつけたり、教え導いたり、さらには甘え上手を誘い、子ども本来の自分を取り戻すのを助ける際にも、互いの体を仲立ちとした心のやりとりを、欠かすことができないのです。抱っこ法という名称はここから来ています。
 いったん体を使って子どもの心を抱きしめることができるようになると、大人のまなざしや声かけや、さらには雰囲気で抱きしめる、といったふれあいもできるようになります。